米子歴史浪漫プロジェクト


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制作日記

チャリポタの自転車探訪記

■『砂の器』のロケ地を訪ねて 米子編

『砂の器』を日本映画の最高傑作と言った評論家がいました。
映画好きのチャリポタはリバイバル上映されるたびに、映画館に足を運びました。
何度観ても、父と子の旅のシーンで涙したものです。

『砂の器』は、奥出雲地方の亀嵩をはじめ、鳥取砂丘など全国でロケが行われています。
そのため、ロケ地マップなどの専門のサイトまであります。

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映画のロケ隊は日野川土手から、伯耆大山を望んで櫓(やぐら)を組んでいました。
カメラは、鳥取方面からの特急列車を狙います。

その特急列車に乗っていたのは、今西刑事。
「ズーズー弁のカメダ」という手がかりから、東北の亀田(カメダ)を捜査していました。
しかし、ズーズー弁は出雲地方にもあり、亀嵩(カメダケ)という地名もあることに気がついて、東京からわざわざ出張してきていたのです。

松本清張の小説では次の1行です。
鳥取二時五十一分、米子四時三十六分。大山が左手の窓に見えた。

チャリポタが、大山をバックに特急を撮ろうと思って現地に行くと、先客がいました。
脚が2台立っていて、他にも親子連れと恥ずかしそうにコンパクトカメラ構えている若者。
ここは、鉄道写真のメッカだったのです。

「今日撮るなら、特急やくもがいいよ。車両数が多いから。」
「光の具合、午後からの方が逆光になんなくていいよ。」

いろいろ、マニアックなアドバイスをもらってチャリポタが撮った写真です。

大山とやくも
写真:大山とやくも

動くので、なかなか上手く撮れません。
その難しさゆえ、上手く撮れたときの喜びはひとしおで、通ってくる人が多いのもわかります。

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<米子弁はズーズー弁だった>

映画では、ズーズー弁の分布地図が紹介されています。
日本地図のなかに、東北地方と奥出雲地方だけが赤く色分けされたものです。
しかし、現在の研究では出雲地方だけでなく、伯耆地方の一部もズーズー弁のなかに含まれるようになりました。

米子弁もズーズー弁だったのです。

米子弁もズーズー弁だった

さらに調べていくと、作者の松本清張の父親は伯耆地方の鳥取県南部町出身ということがわかりました。
清張の父親はズーズー弁を話していたのでしょうか?
残念ながら、南部町の方言は音韻は似ているが音声に濁りがないのでズーズー弁ではありません。

松本清張はズーズー弁を父から聴いた、というチャリポタの独自な推理の糸口は途絶えたかにみえました・・・が、新たな真実が出てきました!
父親の松本峯太郎(旧姓田中)は、物心つくと米子の松本家に養子に出され、米子で育ったのです。

放浪癖のあった父親は、十九のときに米子を出奔します。
ひとりで広島に行って暮らすうちに、結婚をして清張が生まれました。
清張は、父親のしゃべりについて伯耆訛りと広島訛りがごっちゃになっていたと回想しています。

米子弁同士でしゃべる相手がいたわけではないので、父親は広島ではズーズー弁でなかったかも?
と思ったら、またまた新たな証拠が出てきました。

米子の養父母は、広島にきて父親とひとつ屋根の下で暮らしていたのです。
清張は、この義理の祖父の葬式をぼんやりと覚えているといいます。
本人も気づいていないようですが、彼はズーズー弁の3人の会話の中で育ちました。

そのせいか、清張の書くズーズー弁は実に正確です。
出雲・伯耆の人が読んでも全然違和感がありません。

「そげです。あげな立派な人はあアません。私が友だちだけん、特別にほめちょるわけじゃあアませんが、ほんとに珍しい人です。そげそげ、いつでしたかな。この村にナリンボウのホイタが来ましてね」
(砂の器より、ホイタとは乞食のことです)

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チャリポタは、松本清張の『砂の器』の小説を今回初めて読みました。
ハンセン氏病の差別や偏見についての記述があまりなくて、意外でした。

山田洋次などの脚本により、映画で付け加えられたもののようです。
映画をみた松本清張は言いました。

「映画は、原作を超えている。」

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文・イラスト/チャリポタ



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